専修人の本_2025年度

2025年度 新刊紹介

新しい本?山田健太教授
転がる石のように ー 揺れるジャーナリズムと軋む表現の自由
発売日 2025.5.10
著 者 山田健太
発 行 田畑書店
価 格 税込2,750円
近年の表現の自由とジャーナリズムのありようは、2000年代に入ってから相次いだ表現規制立法、15年ごろからの政治的公正さを理由とした放送局への圧力や政治色がある作品展示の拒否といった忖度の蔓延、そして20年以降のコロナ禍を理由とする市民の自由や権利全体の縮減と、どんどん悪化の一途をたどっている。
前作の2冊『見張塔からずっと』『愚かな風』はそうした前2期の状況を、そして本書は3期目をそれぞれ描いている。いずれもボブ?ディランの詩からタイトルを付けたが、この3部作で時代の流れを理解いただけるのではないかと思う。そして未来に向けての希望は、最後に掲載した本学文学部ジャーナリズム学科と大学院文学研究科ジャーナリズム学専攻の開設への思いを込めた2篇の文のなかにある。
著者(やまだ?けんた)文学部教授。言論法、ジャーナリズム学。

新しい本?中村吉明教授
日本の電機産業の創造的破壊
発売日 2025.4.8
著 者 中村吉明
発 行 専修大学出版局
価 格 税込3,300円
高度成長期、自動車産業とともに日本経済のけん引役だった電機産業。その主要アクターは、多角化し、家電製品から半導体までさまざまな製品を作る総合電機メーカーであった。それらはリーマンショックを契機に大きな赤字を計上し、選択と集中の掛け声のもと、フルセットのメーカーから変容していった。コングロマリット?プレミアムを目指し、事業を入れ替えながら業績を大幅に改善した企業もあれば、全く違った業態となって成功した企業もある。一方で、企業規模を縮小し、利益が十分上げられない企業も出てきている。
このように総合電機メーカーは、業態、業績とも同じカテゴリーの企業とは言えない企業群となってしまった。それらの違いはどこから来るのだろうか。経営者の能力か、マネジメントや経営戦略の違いなのか。本書はその要因を探る。
著者(なかむら?よしあき)経済学部教授。産業政策論。

専修人の本?原田さん?金井さん共編著
Social Well-Being, Development, and Multiple Modernities in Asia
発売日 2024.10.3
共編著 原田博夫、金井雅之ら
発 行 Springer
価 格 税込12,154円
社会が豊かになると、人は幸せになれるか?幸福には豊かさに加え、どういう人間関係や社会制度が必要か?
本書は、ソーシャル?ウェルビーイング研究センターがアジア7カ国?地域の大学等と行った共同研究の成果の一部である。国際意識調査における人々の幸福度の平均は、経済的に豊かな日本?韓国?台湾で低く、経済発展の途上にあるモンゴル?ベトナム?タイ?フィリピン?インドネシアで高かった。
「豊かさのパラドックス」とも言えるこの事実を説明するために、前半では各国の歴史的経緯と現状が分析される。後半では調査データの計量分析を通じて、どういう人間関係が人を幸せにするか、そのパターンが社会によってどう異なるかが明らかになる。
編著者(はらだ?ひろお)名誉教授、元経済学部教授。財政学。(かない?まさゆき)人間科学部教授。社会学。

新しい本?奥瀬喜之教授訳
価格のマネジメント ー 戦略?分析?意思決定?実践
発売日 2025.2.14
訳 者 奥瀬喜之
発 行 中央経済社
価 格 税込8,800円
本書は、企業が日々直面する価格設定という困難な課題に関して、数多くの事例を盛り込みつつ、理論と実践の両側面から解説を試みた書籍である。
本書の特徴として、ブランドの特性に応じた価格ポジショニングを踏まえた価格戦略や、財の特性に応じた価格マネジメントについて整理している点、近年の新しい価格設定について言及している点が挙げられる。
総ページ数は700ページ近くになるが、経済学や心理学などの知見を踏まえつつも、経営学?商学の視座に立った価格戦略について網羅的に解説されており、実務家及び研究者の両者への示唆に富んだ書籍となっている。
訳者(おくせ?よしゆき)商学部教授。マーケティング、消費者行動、価格戦略。
専修人の本?菅沼堅吾さん著
東京新聞はなぜ、空気を読まないのか
発売日 2025.1.29
著 者 菅沼 堅吾
発 行 東京新聞出版
価 格 税込1,540円
新聞の存在価値は一体どこにあるのでしょうか。突き詰めると国家権力を監視することです。それにより人権を、「かけがえのない命」を守り、ひいては国に二度と戦争をさせないことを究極の使命としています。
東京新聞は権力の空気を読まない新聞、使命に忠実な新聞として際立っています。なぜ、それが可能なのか。著者が編集局長だった2011年6月からの6年間を中心に、舞台裏を全て明かしています。
日本は安保法制の成立によって「戦える国」となり、「新しい戦前」と言われる状況下にあります。SNSの負の側面として、不確かな情報やウソがまかり通っています。今こそ信頼できる新聞が必要です。本書で東京新聞の世界を見てください。「新聞観」が変わるはずです。
著者(すがぬま?けんご)東京新聞(中日新聞東京本社)顧問。専修大学評議員。元石巻専修大学客員教授。